2012年2月アーカイブ

横田浩さん 伸之さん

『 真珠の街 』 神戸 

本真珠専門店  ヨコタパール
  代表取締役  横田  浩さん (大営40卒)
     取締役  横田伸之さん (大営H08卒)   


今から約110年前に、日本の先覚者の努力により真珠の養殖技術が確立されて以降、日本近海はあこや真珠の生息に適した環境であることが幸いし、三重県、愛媛県、熊本県、長崎県などを中心に、各地に養殖されるようになりました。


tokota-pearl1.jpg
[祖父が経営していた頃の養殖場の様子]
       yokota-pearl2.jpg
       [真珠貝を採取するあまさん]
yokota-pearl3.jpg
[真珠貝から真珠を取り出す瞬間]
     yokota-pearl4.jpg
     [サイズ別・品質別に選出されて製品へ加工されます]

では、なぜ神戸か?その当時、真珠は日本の庶民にとっては今以上の高級品で、国内での需要はほとんどなく、そのほとんどがアメリカをはじめ、ヨーロッパ各地に輸出されていました。日本各地の養殖場で採れた真珠はひとまず神戸に集められ、国際貿易港である神戸港から輸出されていました。
  神戸のもう1つの利点としては、その環境があります。真珠の選別をする際には『午前中の北側光線』の下で行うのが最も良いとされているのですが、その点において神戸市周辺は北側に緑豊かな六甲山脈がそびえ、午前中には六甲山の木々の緑に反射した柔らかな光が降り注ぐという絶好の土地でありました。
  貿易港が近くにあることと真珠の選別・加工に適した環境を持ち合わせていたことが、神戸が「真珠の街」として発展した理由です。弊社の創業者も昭和の初め頃に真珠貿易商を始め、養殖、加工、輸出を一貫して行っていました。
  戦後になると真珠業界は『ドル獲得産業』ともてはやされ、ますます輸出量が増えていくと共に、更に多くの真珠関連の企業が神戸に設立されました。その当時、私共もドル獲得に貢献したということで通産省から賞を受けたことがあります。今では考えられないことですが、当時の真珠産業は日本の輸出においてそれほど大きなシェアを誇っていたということです。
そのような真珠産業の草創期から全盛期の慣習を伝統として受け継ぎ、現在でも神戸は真珠の流通拠点としての役割を担っています。日本各地の養殖場のみならず世界各国の養殖場で産出された真珠の多くは神戸に集まってきます。全盛期の「神戸=真珠」のイメージは薄れてしまいましたが、小さいながらも当時からの文化、伝統を受け継ぐ企業として、「神戸品質」の真珠をご提供し続けられるよう努力を続けています。                                                        
                             横田 伸之                                                       
                           

 

+〘プラスTALK〙+

Q ヨコタパールの創立は?
A ヨコタパールとしては1962年創立、今年でちょうど50周年です。
祖父は戦前から真珠養殖・加工・輸出を一貫して行っていましたので、それも含めると70年以上真珠に携わっていることになります。

Q 初代と神戸の真珠業界の関係は?
A 真珠業界が草創期のときに中心となって活躍したうちの一人でしたので、真珠業界の礎を築いた人物の一人であったと思います。当時は御木本と並ぶ真珠業界の三大企業のうちの一社だったようです。

Q 初代と真珠王御木本幸吉との接点は?
A 真珠養殖を開始する際に教えを請いに行ったことを聞きました。

Q 戦後、駐留米兵が日本土産として真珠を買って帰ったと聞きましたが?
A 非常に多かったと思います。数年前に、米兵の子孫(孫?)が、その米兵から譲り受けた真珠のネックレスを弊社に持って来られたことがありましたが、まさしく祖父の代に販売した真珠でした。

Q 真珠業界が華やかであった頃のエピソードを何かご存じですか。
A 当時ウルトラマンの話の中に神戸のお金持ちが誘拐されるストーリーがありましたが、その誘拐された人物が真珠会社の社長という設定でした。真珠が神戸の象徴であったことの証の一つでしょう。

Q 今、神戸には何軒の真珠店があるのでしょうか?
A かつて300以上の真珠店・真珠加工会社があったと言われています。詳細は分かりませんが、15年ほど前から不況のあおりを受けて減少の一途をたどっています。

Q 真珠の資産価値、今後の価格は
A これは非常に難しいです。金やプラチナ、ダイアなどの有限資源と異なり、真珠は人の手で養殖することができます。無限に数を増やしてしまうと、その分1つ1つの価値は下がります。養殖現場が世界中に広がっている現在、生産量の調整が1つの課題です。(特に新興国では作っただけ儲かるという考えをする人が多いため、外国産の真珠は増える一方です。)
もう一点、バイオテクノロジーの問題があります。真珠は、養殖とはいえ貝を開けてみるまでどんな真珠ができているか分からないという不確定要素が多分にあるからこそ、形の綺麗な真珠、色の綺麗な真珠、輝きの強い真珠、あるいはそれらを全て兼ね備えた真珠に希少価値があったわけですが、バイオテクノロジーが養殖現場に進出してくると、これまで出現率の低かった真珠を思いのままにたくさん作ることができるようになってしまいます。これもまた1つ1つの価値を下げてしまう要因となります。
真珠業界は、科学の発展が必ずしも幸いしない産業と言えます。

Q 真珠の持つ魅力は
A 貝が作るという不確定要素が何よりの魅力です。
ダイアのように人間がカットしたりすることなく、貝が生み出したそのままの形で使う宝石です。養殖するときには丸い真珠を作ろうとしているわけですが、必ずしも丸く出来上がるとは限らず、形のいびつなものも多数できます。しかし、それはそれで個性的な宝飾品として楽しむことができるのも魅力の1つです。
また、ダイアなどの鉱物系の宝石とは異なり、貝が生み出す生物系の宝石なのでこの上ない温かみを感じられます。
神戸の文化と伝統を詰め込んだ「神戸品質」の真珠をぜひ一度手にとってご覧下さい。確かな真珠選びをヨコタパールがお手伝いいたします。

 

このアーカイブについて

このページには、2012年2月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2011年12月です。

次のアーカイブは2012年3月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。